場所が前後して申し訳ないが、ダグラスの町の蒸気列車が発する高台から急坂を下ると海岸に出、そこから町の北端、ダービー・キャッスルまで、超高級・高級・一般ホテルや貸別荘が切れ目なく連なる海岸線沿いに1.6マイル(約2.6km)、軌間3フィート・複線のダグラス馬車軌道 Douglas Horse Tramway が伸びている。創業は1876(明治19)年というから古い。客車には屋根もない完全オープン車、2階のみオープン車など何種類かが車庫に収まっているようだ。
先回のスネイフェル登山鉄道のサードレール方式手用ブレーキの構造・動作が説明不足でさっぱり分からんとお叱りが。写真を撮っていないので、また 「The Railways and Tramways of the Isle of Man 」から借用してお目にかける。運転席で小さな丸いハンドルを回すと、ネジが菱型状の枠の頂点角度を狭め、下方のブレーキシューがサードレールを締め付けるという、到って単純(野蛮)な仕掛けである。
最初は蒸気動力で計画された由だが、1895年1月建設開始し、4マイル53チェーン(7.5km)の完工が8月というから驚きである。1/9(111.11‰)の急勾配だが、電車は粘着力だけで上れることが判明し、軌間中央に敷設されたサードレールは本来ロッヒェル式(水平両側ピニオン)の粘着版だったのを、下りのブレーキ用のみに使うように変更されたそうな。軌間に3フィート6インチを選んだのは、元来このサードレールの為なのであろう。同年12月鉄道全線は建設費を超える額で Isle of Mann Tramways & Electric Power Co. に、のち更に Manks Electric Railway Co.に売却された。
列車は30分毎に発車。森を抜けると真中に離合設備があり、シーズンには2個列車が走るのだろう。起点以外すべて無人で、途中停留場には Passengers wishing to bord train must give a clear signal to driver との表示があった。DRIVER とは正に英語で、米語なら ENGINEER と書くのだろう。